オリンパスのカメラボディが持つ独特の色表現や堅牢性に惹かれつつ、パナソニックのLUMIXレンズ、特にライカ銘レンズのシャープな描写力にも魅力を感じている。
そんなマイクロフォーサーズユーザーは少なくないでしょう。メーカーの垣根を越えたレンズ選びは、このシステムの大きな醍醐味です。
しかし、実際にオリンパスのボディにパナソニックのレンズを装着した際、手ぶれ補正機能がどうなるのかは、多くのユーザーが抱く共通の疑問ではないでしょうか。オリンパスとパナソニックレンズの相性、そしてオリンパスとパナソニックレンズの互換性は基本的に確保されていますが、LUMIXレンズの手ぶれ補正とオリンパスの手ぶれ補正機能がどのように連携するのか、あるいはしないのかは、撮影結果を左右する重要な知識となります。
この記事では、マイクロフォーサーズの手ぶれ補正レンズを異なるメーカーのボディで組み合わせた際の詳細な動作について、オリンパスのレンズ手ぶれ補正優先設定の役割や、見落としがちなオリンパスボディにパナソニックレンズ使用時の色収差といった画質に関わる注意点まで、徹底的に掘り下げて解説します。
オリンパスボディとパナソニックレンズの手ぶれ補正の基本

- オリンパスとパナソニックレンズの互換性とは
- オリンパスとルミックスレンズの互換性について
- オリンパスとパナソニックレンズの相性を解説
- マイクロフォーサーズの手ぶれ補正レンズの概要
- オリンパスの手ぶれ補正機能の仕組み
- LUMIXレンズの手ぶれ補正の仕組み
オリンパスとパナソニックレンズの互換性とは
まず大前提として、オリンパス(現OM SYSTEM)のカメラボディとパナソニックのレンズには、基本的な互換性が保証されています。
この揺るぎない互換性の基盤となっているのが、両社が2008年に共同で発表した「マイクロフォーサーズシステム規格」です。この共通規格の採用により、ユーザーは物理的なマウント形状だけでなく、電子接点を介した情報のやり取りにおいても、メーカーの違いを意識することなくレンズを装着し、撮影を楽しむことができます。
具体的には、以下のようなカメラの根幹をなす機能がメーカーをまたいでも問題なく動作します。
- オートフォーカス(AF)の駆動(S-AF, C-AFなど)
- 絞り値の設定と自動制御
- シャッタースピードの設定と自動制御
- 露出モード(P/A/S/M)の動作
- 撮影した画像のExif情報(レンズ名、焦点距離、絞り値など)の記録
このオープンな規格のおかげで、ユーザーは一方のメーカーにはないユニークな焦点距離や特性を持つレンズを自由に選択でき、まさに「自分だけの最適なカメラシステム」を構築できるのです。これが、他の多くのカメラマウントにはない、マイクロフォーサーズならではの大きなアドバンテージとなっています。
マイクロフォーサーズの思想:小型化と高画質の両立
マイクロフォーサーズシステムは、一眼レフカメラの象徴であったミラーボックスやペンタプリズムといった機構を排除することで、システム全体の圧倒的な小型・軽量化を実現しました。この革新的な設計思想を共通の基盤とすることで、オリンパスとパナソニックは共に発展し、ユーザーに豊富な選択肢を提供し続けています。
しかしながら、「全ての機能が100%完璧に、そして最高のパフォーマンスで動作する」わけではない点には注意が必要です。
特に、各社が独自に磨き上げてきた高度な画像処理技術や制御システム、具体的には手ぶれ補正の協調動作(シンクロ手ぶれ補正)や、レンズ固有の歪みや色収差を補正する機能については、メーカーをまたぐことで一部機能が制限されたり、意図した性能が発揮されなかったりするケースが存在します。この点が、単に「装着してシャッターが切れる」というレベルを超えた、実用上の「相性」の問題として浮上してくるのです。
オリンパスとルミックスレンズの互換性について

前述の通り、「ルミックス(LUMIX)」はパナソニックがグローバルに展開するデジタルカメラおよび交換レンズのブランド名です。したがって、「オリンパスとルミックスレンズの互換性」は、「オリンパスとパナソニックレンズの互換性」と全く同じ意味合いであり、基本的な撮影機能については全く問題なく使用できます。
特にオリンパスユーザーにとって魅力的に映るのは、ルミックスのレンズ群の中でも「LEICA DG」の名を冠するシリーズでしょう。
これらは、ドイツの歴史ある名門光学機器メーカー「ライカ」社の厳しい品質基準をクリアし、その認証を受けて開発された高性能レンズ群です。キレのあるシャープな描写、豊かで自然なボケ味、そして透明感のある色再現性は、多くの写真愛好家を魅了しています。オリンパスのボディが持つ深みのある色作りと、ライカDGレンズの精緻な描写力を組み合わせたいと考えるのは、ごく自然な発想です。
もちろん、この組み合わせでも基本的な撮影は可能です。しかし、ここでもやはり重要になるのが、パナソニック独自のレンズ内手ぶれ補正機構「POWER O.I.S.」の扱いです。オリンパスのボディ内手ぶれ補正とどのように共存、あるいは排他的に動作するのかを正確に理解しておくことが、この魅力的な組み合わせの性能を最大限に引き出すための鍵となります。
豆知識:ブランド名の違い
オリンパスのレンズは「M.ZUIKO DIGITAL」、パナソニックのレンズは「LUMIX G」というブランドで展開されています。マウントは同じマイクロフォーサーズですが、それぞれに光学設計や思想、得意とする分野が異なります。この多様性こそが、ユーザーにとっての喜びなのです。
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オリンパスとパナソニックレンズの相性を解説

オリンパスのボディとパナソニックのレンズを組み合わせる際の「相性」をより深く理解するために、考慮すべき重要な技術的ポイントは主に以下の2点に集約されます。
- 手ぶれ補正機能の相互作用と限界
- レンズ収差補正(特に色収差)のデジタル処理における互換性
これらは撮影した写真の鮮明さや画質に直接的に関わるため、単に「使える」か「使えない」かという二元論で判断するべきではありません。
まず手ぶれ補正については、両社のシステムが持つ最高のパフォーマンスを発揮するための「協調(シンクロ)補正」は、メーカーが異なる組み合わせでは機能しないという事実を受け入れる必要があります。これは、オリンパスが強力な「ボディ内」手ぶれ補正を、一方のパナソニックが伝統的に「レンズ内」手ぶれ補正を軸にシステムを進化させてきたという、それぞれの歴史的背景と技術的アプローチの違いに起因します。このため、異種混合の組み合わせでは、基本的にどちらか一方の手ぶれ補正機能を選択して利用することになります。
次に、より見過ごされがちですが深刻なのが、レンズ収差補正、特に色収差の問題です。これは、パナソニック製レンズをオリンパス製ボディで使用する際に顕著になる可能性があり、画像の細部の品質に影響を及ぼすため、特に画質を重視するユーザーにとっては非常に重要な確認事項です。
組み合わせる前のチェックポイント
- 目的の明確化:最高の補正効果を求めるならメーカーを統一。レンズの描写力を優先するなら、補正機能の制限を許容する。
- 設定の確認:オリンパスボディ側のメニューで、手ぶれ補正の優先順位を正しく設定できるか理解しておく。
- 画質への影響:特にパナソニックレンズを使う場合、色収差の問題が発生する可能性を認識し、RAW現像での対応などを視野に入れる。
「相性が悪い」と諦めるのは早計です。多くの場合、カメラの設定を少し変更したり、RAW現像で一手間加えたりすることで、両社の機材の「良いとこ取り」ができます。そのための正しい知識を身につけましょう。
マイクロフォーサーズの手ぶれ補正レンズの概要

マイクロフォーサーズシステムで利用できる手ぶれ補正技術は、大きく分けて2つの物理的な方式に分類されます。それぞれの方式のメリット・デメリットを理解することが、適切な機材選びと設定の第一歩となります。
1. ボディ内手ぶれ補正 (IBIS: In-Body Image Stabilization)
カメラボディの内部に搭載されたイメージセンサーユニットそのものを、磁力などを用いて精密に動かすことで、物理的に手ぶれを打ち消す方式です。オリンパス(OM SYSTEM)が業界をリードしてきた技術であり、その補正効果の高さには絶大な定評があります。
- 最大のメリット:装着するレンズを選ばない普遍性。手ぶれ補正機構を持たない単焦点レンズやオールドレンズ、さらには他社製マウントアダプターを介したレンズまで、あらゆるレンズで手ぶれ補正の恩恵を受けられます。
- 構造上のデメリット:望遠レンズになるほど、ブレを補正するためにセンサーを大きく動かす必要があり、物理的な可動範囲の限界から、レンズ内手ぶれ補正に比べて効果がやや低下する傾向があります。
2. レンズ内手ぶれ補正 (O.I.S.: Optical Image Stabilizer)
レンズの光学系の一部に「補正レンズ」を組み込み、これを動かすことで光の進路を変化させ、手ぶれを光学的に補正する方式です。パナソニック(LUMIX)が多くのレンズに採用している伝統的な技術です。
- 最大のメリット:レンズの焦点距離や特性に合わせて最適化された補正ユニットを搭載できるため、特に望遠・超望遠レンズで非常に高い補正効果を発揮しやすいとされています。また、補正された安定した像をファインダーやモニターで確認できるため、フレーミングが容易になる利点もあります。
- 構造上のデメリット:手ぶれ補正機構が搭載されていないレンズでは、当然ながらその機能を利用できません。また、機構を内蔵するため、レンズがわずかに大きく、重く、高価になる傾向があります。
そして、これらの技術を統合し、相乗効果を狙ったのが「協調手ぶれ補正」です。ボディとレンズが連携し、単独で動作させるよりも遥かに高い補正効果を生み出しますが、前述の通り、この恩恵を受けられるのは原則として同一メーカーの対応機種同士の組み合わせに限られます。
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オリンパスの手ぶれ補正機能の仕組み

オリンパスのカメラシステムの根幹を支える技術の一つが、世界最高レベルと評される高性能な「5軸ボディ内手ぶれ補正」です。
一般的な手ぶれ補正が主に補正対象とする、カメラが上下にお辞儀する動き(ピッチ)と、左右に首を振る動き(ヨー)という2つの「角度ぶれ」に加え、オリンパスのシステムは以下の3つのより複雑な動きも高精度に検知し、補正します。
- 回転ぶれ(ロール):シャッターボタンを押す瞬間に手首が回転してしまう動き。特にスローシャッターでの夜景撮影などで画像の傾きやブレとして現れやすい。
- 水平方向のシフトぶれ:カメラが水平に平行移動してしまう動き。被写体に近づくマクロ撮影などで、ピント位置のズレとして大きな影響を及ぼす。
- 垂直方向のシフトぶれ:カメラが垂直に平行移動してしまう動き。水平シフトぶれ同様、マクロ撮影で顕著になる。
これら5つの軸の動きを、高感度ジャイロセンサーが毎秒数千回のレベルで検知し、その情報を基に強力なアクチュエーターがイメージセンサーユニットを瞬時に、かつ精密に動かすことで、あらゆるシーンで強力に手ぶれを抑制します。パナソニック製のレンズを使った場合でも、この卓越したボディ内手ぶれ補正の恩恵を存分に受けることが可能です。
さらに、オリンパス製の手ぶれ補正対応レンズ(ISレンズ)を装着した際には、究極の補正性能を発揮する「5軸シンクロ手ぶれ補正」が作動します。これは、ボディとレンズが協調し、角度ぶれは主にレンズ側が、そしてシフトぶれや回転ぶれはボディ側が分担して補正することで、単独では到達できないレベルの補正効果を実現する技術です。OM SYSTEMの公式サイトによると、機種によっては最大8.5段分という驚異的な補正性能を達成しています。
LUMIXレンズの手ぶれ補正の仕組み

パナソニックのLUMIX Gレンズ群に搭載されている手ぶれ補正は、「POWER O.I.S.」や「MEGA O.I.S.」と名付けられたレンズ内手ぶれ補正システムが基本です。レンズ内に組み込まれた高精度ジャイロセンサーがカメラの微細な揺れを検知し、その信号を基に超音波モーターなどが補正レンズを瞬時に駆動させ、センサーに届く光の経路を安定させることで、像のブレを光学的に打ち消します。
このレンズ内手ぶれ補正方式は、特に望遠・超望遠レンズでの撮影において、その真価を発揮しやすいという特性があります。焦点距離が長くなるほど、わずかな角度のブレが大きな像の移動につながりますが、レンズ側で直接的に補正することで、これを効率よく抑制できます。また、ファインダーや背面モニターで見るライブビュー映像そのものが安定するため、超望遠撮影時に被写体を追いかけたり、精密なフレーミングを行ったりするのが非常に楽になるという実用的なメリットも大きいのです。
そして、パナソニックのボディ内手ぶれ補正(B.I.S.)を搭載したカメラと、LUMIXの対応レンズ(O.I.S.搭載)を組み合わせることで、パナソニック版の協調手ぶれ補正である「Dual I.S. 2」が機能します。これは、ボディとレンズのセンサー情報を統合し、焦点距離やブレの種類に応じて双方の補正機能を最適に配分する先進的なシステムです。パナソニックの公式サイトでは、この技術により最大7.5段分という高い補正効果が得られるとされています。
オリンパスのボディにLUMIXレンズを装着した場合は、この「Dual I.S. 2」の連携は行われませんが、レンズ単体が持つ「POWER O.I.S.」の補正機能は、設定によって利用することが可能です。
オリンパスボディとパナソニックレンズの手ぶれ補正の注意点

- オリンパスボディにパナソニックレンズ使用時の色収差
- オリンパスのレンズ手ぶれ補正優先設定の方法
- 協調手ぶれ補正はメーカー違いでも効くのか
- 実際の撮影で手ぶれ補正効果は落ちるのか
- オリンパスボディとパナソニックレンズの手ぶれ補正まとめ
オリンパスボディにパナソニックレンズ使用時の色収差
手ぶれ補正の動作以上に、最終的な写真の品質に直接的な影響を及ぼす可能性がある、非常に重要な注意点が「色収差」の問題です。
【最重要】画質が意図せず低下する可能性があります
パナソニック製のレンズ(特に一部の広角・標準ズームレンズ)をオリンパス製のボディで使用した場合、被写体の輪郭部分、特に明暗差の激しい箇所に、本来は現れないはずの紫や緑の色ずれ(倍率色収差やパープルフリンジ)が顕著に発生することがあります。
この現象は、カメラやレンズの故障ではなく、両社のレンズ設計および画像処理に対する思想の違いによって生じます。
- パナソニックの設計思想:レンズ自体で光学的な収差を完璧に補正するのではなく、レンズの小型化やコストパフォーマンス、描写性能(シャープネスやボケ味など)を優先して設計。その上で、レンズ内に格納された「補正プロファイル」データをボディ側に送信し、カメラの画像処理エンジンがデジタル的に色収差などを補正することを前提としています。
- オリンパスの設計思想:伝統的に光学性能を重視し、レンズ単体である程度の収差補正を完結させる傾向があります。ボディ側のデジタル補正は、それをさらに洗練させるための補助的な役割として位置づけられています。
この結果、パナソニックレンズが持つ「デジタル補正してください」という信号を、オリンパスのボディが完全には解釈・実行できず、本来であればカメラ内で現像(JPEG生成)される段階で自動的に消去されるはずの色収差が、補正されないまま画像に残ってしまうのです。
もちろん、撮影モードをRAWに設定し、後からAdobe LightroomなどのPC用現像ソフトでデータを開けば、レンズプロファイルを適用したり、手動で補正スライダーを調整したりすることで色収差を綺麗に除去することは可能です。しかし、カメラ内で生成されるJPEG画像を主体に楽しみたい方や、撮影後の手間を極力省きたい方にとっては、この一手間が大きなストレスとなり得ます。
なお、逆の組み合わせ、つまりオリンパス製のレンズをパナソニック製のボディで使う場合には、オリンパスレンズが元々光学的に収差を抑え込んでいるため、この種の問題はほとんど発生しません。この非対称な関係性が、マイクロフォーサーズの互換性を複雑にしている一因でもあります。
オリンパスのレンズ手ぶれ補正優先設定の方法

オリンパスのカメラボディに、パナソニック製のレンズ内手ぶれ補正(O.I.S.)を搭載したレンズを装着すると、カメラはレンズが手ぶれ補正機能を持っていることを自動的に認識します。その上で、ユーザーはボディ内手ぶれ補正とレンズ内手ぶれ補正のどちらを優先して使用するかを、メニューから明示的に設定することが可能です。
多くのオリンパス(OM SYSTEM)製カメラでは、以下の手順で設定にアクセスできます。(機種によりメニューの名称や階層は若干異なります)
- カメラの「MENU」ボタンを押す。
- 「撮影メニュー」(歯車のアイコンなど)を選択する。
- 「手ぶれ補正」または関連する項目を探す。
- その中に「レンズIS優先」や「レンズ手ぶれ補正優先」といった設定項目がある。
設定による動作の違い
この「レンズIS優先」設定をどうするかで、動作する補正機構が変わります。
- 優先設定を「オフ」にする:オリンパス自慢の5軸ボディ内手ぶれ補正が有効になります。このとき、パナソニックレンズ側のO.I.S.機能は自動的に無効化されます。【推奨設定】
- 優先設定を「オン」にする:パナソニックレンズ側のレンズ内手ぶれ補正(O.I.S.)が有効になります。このとき、オリンパスのボディ内手ぶれ補正は自動的に無効化されます。
どちらの設定が最適かは一概には言えませんが、ほとんどの撮影シーン、特に広角から標準、中望遠域(35mm判換算で約150mm程度まで)の焦点距離においては、オリンパスの5軸ボディ内手ぶれ補正の方が総合的に高い効果を発揮するとされることが一般的です。そのため、特にこだわりがなければ、基本的には「レンズIS優先」設定を「オフ」にして、ボディ側の補正機能を活用することをおすすめします。
ただし、超望遠レンズを使用する場合や、三脚にカメラを固定し、構図の微調整時の揺れだけをレンズ側で抑えたい場合など、限定的な状況ではレンズ内補正が有利に働く可能性も考えられます。状況に応じて使い分けてみるのも、機材を深く理解する上で面白い試みでしょう。
協調手ぶれ補正はメーカー違いでも効くのか

この疑問に対する答えは、残念ながら、そして極めて明確に「いいえ、機能しません」です。オリンパスが誇る「5軸シンクロ手ぶれ補正」も、パナソニックの先進技術である「Dual I.S. 2」も、異なるメーカーのボディとレンズを組み合わせた場合には、いかなる状況でも動作することはありません。
協調手ぶれ補正という技術は、単にボディとレンズの手ぶれ補正を同時にオンにするような単純なものではありません。それは、ボディとレンズに内蔵されたそれぞれの高精度ジャイロセンサーが検出したブレ情報を、毎秒数千回という高速で相互に通信・共有し、カメラの画像処理エンジンがその膨大な情報を瞬時に解析。そして、ブレの方向や周波数に応じて、ボディとレンズの補正ユニットの役割分担をリアルタイムに最適化し続ける、という極めて高度で複雑な制御システムの賜物です。
このボディとレンズ間の高速通信の仕様(プロトコル)や、ブレを解析して補正量を決定する計算式(アルゴリズム)は、各社が長年の研究開発で培ってきた技術の結晶であり、当然ながらトップクラスの企業秘密です。そのため、他社製品との互換性は全く考慮されていません。
したがって、オリンパスのボディにパナソニックのレンズを装着した時点で、ユーザーが利用できる手ぶれ補正の選択肢は、以下の2つに限定されることになります。
- オリンパスのボディ内手ぶれ補正(IBIS)を単独で使用する
- パナソニックのレンズ内手ぶれ補正(O.I.S.)を単独で使用する
もし両方が同時に中途半端に動作してしまうと、補正が過剰になったり、互いに干渉し合ったりして、逆に映像が不自然に揺れたり歪んだりする弊害が生じます。これを防ぐため、カメラのファームウェアは、異メーカーのレンズが装着されたことを検知すると、協調補正のシーケンスを起動せず、どちらか一方のみが排他的に動作するように厳密に制御しているのです。
実際の撮影で手ぶれ補正効果は落ちるのか

「協調手ぶれ補正が使えない」という事実を知ると、「やはりメーカー違いの組み合わせでは手ぶれ補正の効果が大きく落ちてしまうのでは?」と心配になるかもしれません。この問いに対しては、「はい、純正の組み合わせが持つ『最大補正効果』に比べれば落ちますが、実用上は全く問題ないレベルで強力に効きます」というのが、最も正確で実践的な答えです。
忘れてはならないのは、オリンパスのボディ内手ぶれ補正は、協調補正なしの単独動作であっても、他社システムと比較して非常に優秀であるという点です。OM SYSTEMの現行モデルであれば、ボディ単体でCIPA規格準拠で6.0段分や7.0段分といった、数年前の協調補正に匹敵するほどの驚異的な補正性能を持っています。
これは、三脚の使用がためらわれる美術館や薄暗い室内、日没後の風景を手持ちで撮影する際などに絶大な威力を発揮します。純正の組み合わせであれば「1秒のシャッタースピードでも止まる」ところが「0.5秒までなら安心して止められる」といった限界性能の差は確かに存在しますが、日常的なスナップ撮影や旅行先での記録において、手ぶれ写真が量産されて困る、といった事態に陥る心配はまずありません。
【再確認】手ぶれ補正の動作まとめ表
マイクロフォーサーズにおける主要な組み合わせと、その際に動作する手ぶれ補正システムの関係を再確認しておきましょう。
| カメラボディ | レンズ | 動作する手ぶれ補正システム | 補正効果 |
|---|---|---|---|
| オリンパス/OM SYSTEM | オリンパス/OM SYSTEM (IS搭載) | 5軸シンクロ手ぶれ補正 | 最大 (★★★★★) |
| オリンパス/OM SYSTEM | パナソニック (O.I.S.搭載) | ボディ内補正 または レンズ内補正 (選択式) | 強力 (★★★★☆) |
| パナソニック | パナソニック (O.I.S.搭載) | Dual I.S. 2 | 最大 (★★★★★) |
| パナソニック | オリンパス/OM SYSTEM (IS搭載) | レンズ内補正のみ (ボディ内は原則オフ) | 有効 (★★★☆☆) |
結論として、協調手ぶれ補正という「ボーナスステージ」の恩恵は受けられませんが、オリンパスボディが元々持っている基礎体力が非常に高いため、パナソニックレンズとの組み合わせでも、実用上は十二分に強力な手ぶれ補正効果を得られると考えて差し支えありません。
オリンパスボディとパナソニックレンズの手ぶれ補正まとめ
最後に、この記事で解説してきたオリンパス製ボディとパナソニック製レンズを組み合わせた際の、手ぶれ補正に関する重要なポイントを箇条書きで総括します。
この記事のポイント
- オリンパスとパナソニックのレンズマウントは「マイクロフォーサーズ規格」で完全に共通
- 物理的な装着やオートフォーカス、絞り制御といった基本動作は全く問題なく可能
- メーカーの垣根を越えたレンズ選びがマイクロフォーサーズシステムの最大の魅力
- 両社の最高の補正効果を発揮する「協調手ぶれ補正」はメーカーが異なると機能しない
- オリンパスの「5軸シンクロ手ぶれ補正」はオリンパス(OM SYSTEM)製品同士でのみ動作
- パナソニックの「Dual I.S. 2」はパナソニック(LUMIX)製品同士でのみ動作
- オリンパスボディにパナソニックレンズを装着した場合でも手ぶれ補正はしっかりと効く
- カメラのメニュー設定で「ボディ内補正」か「レンズ内補正」のどちらかを選択して使用する
- 一般的には、オリンパスの強力な5軸ボディ内手ぶれ補正を優先(レンズIS優先オフ)するのがおすすめ
- 協調補正が使えないため純正の組み合わせより最大補正段数は劣る
- しかし、オリンパスのボディ内補正は単独でも非常に高性能なため実用上の問題は少ない
- 手ぶれ補正機能よりも、むしろ画質面での注意が必要なケースがある
- パナソニック製レンズをオリンパスボディで使うと、デジタル補正が効かず色収差が目立つことがある
- 最高のパフォーマンスと画質を一切の妥協なく求めるなら、レンズとボディのメーカーを揃えるのが最も確実な選択肢
- 各機能の特性と限界を正しく理解すれば、メーカー混合の組み合わせで撮影の幅を広げることは十分に楽しめる
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